今回は1800年代以降に使用されていた、フランス海軍「Marine Nationale」の船舶時計をご紹介です。
“店主の同級生と兄がスイスで時計職人をしております関係でデポリュテスのブログに投稿して下さいましたー!(というか、無理矢理オファー)
販売ではなく、店主コレクター品のため、ご紹介のみをお許し下さいませ。”
未来の時計職人さんやフレンチネイビーファンのみなさんにも情報シェアです!
まずは、製作年代からご紹介。
1800年代後半のフランスの典型的な置き時計用機械式ムーブメント(時計の中身)を使用していることから、その年代か、少し後のものと推測されます。
続いて、文字盤。
写真の文字盤のM.N.は「Marine Nationale(フランス海軍)」の略称です。
その下には、この時計の個体番号と思われる数字が印刷されています。
「J.AURICOSTE」は海軍や政府の時計を製造していたブランドとして有名で、
「Horloger de la Marine de l’Etat」は海軍の時計師(会社)を意味します。
この時計の仕様。
ゼンマイで駆動する時計で、ケースの前面を開き、文字盤中央下の穴にある角型のピンにカギ状のものを差し込んで回し、ゼンマイを巻き上げます。
そのカギは、ケース前面の蓋を閉じて固定するストッパーの役割りも兼ねています。
※写真のケースの向かって右側にある金具ですね。
また、ケース前面の蓋の裏側には、海上での使用を考慮して防水用のパッキンが施されていますので、
この金具をねじ込み式で固定することによりパッキンが圧着され、防水性を高める合理的な仕様になっています。
この時計のムーブメントについて。
この時計には「Mouvement de Paris」と呼ばれるムーブメント形式が採用されています。
特徴は2枚の円形の真鍮板に機構がサンドイッチされている構造です。
この「Mouvement de Paris」は、一般的には振り子時計のムーブメントなのですが、
海上では揺れのため、振り子が正確に機能しません。
そのため、振り子ではなく腕時計に採用されるテンプという機構を採用しています。
ムーブメントのてっぺんに載っている丸い輪っかのようなものですね。
コレがゼンマイの動力を受けて左右に振動して、時計の精度を導き出します。
(鉄道用にも同様の仕様が見られたようです)
そしてその輪っかからツノのようなものが文字盤側に伸びていますが、これは時計の微妙な進み遅れを調整するためのものです。
文字盤裏側に取り付けられた板状のものを左右にスライドすることで、ムーブメントをケースから取り出すことなく、精度の微調整を行うことができたんです!!!
ちなみに文字盤にある「R←→A」の印字ですが、こちらも精度の微調整を行うための仕様です。
しかしこの時計ではその機構は上部にありますのでただのダミーになっています。
つまり、この文字盤はこの時計とは別仕様のムーブメントにも取り付けることもできるようにデザインされたと考えられます。
軍用としてのニーズにカスタマイズされ、装飾を廃してコストダウンを図ってはありますが、
伝統的な型にのっとった現代的な量産ムーブメントとして、とてもユニークなものだと言えると思います。
※写真はウィキペディアより。The ironclad Vauban (1882-1905)
スイスの時計職人さんとデポリュテスでお送りしました今回の
Marine nationale時計いかがでしたでしょうか。
楽しんで頂けたら幸いです。
皆様からもミリタリーに関する投稿をお待ちしておりますよ!!!
では!!!
2013年 08月 12日